グリスの使い分け [テクニック]
先日、キムキムさんから、コメント欄へリクエストを頂きました。
>Yuboさん、あつかましいお願いなのですが、今度グリスの使い分けを講義していただけないでしょうか。
モリブデンは金属が入っているので削れちゃうという人もいますし、迷ってしまいます。
プロはどこにどのグリスをつかっているのでしょうか。
よろしくお願いいたします。
というリクエストなので…講義などと言うと偉そうなので控えめに…僕の考えなどを書いてみます。
まず、この質問を整理すると…モリブデングリスの使い方についてでいいのでしょうか。
整理しすぎかな。でも、長くなるから、(勝手ながら)まずはモリブでいいですよね。
結論から言いますと、モリブデングリスは殆ど使いません。
まず、グリスの使用箇所には…
①潤滑油を使うと軸受け部から漏れるとか、飛散して周りを汚すなどの不具合がある部分。
②点検、給油が頻繁に行えない部分
③ホコリや、水分などの外部からの汚染を防止する部分
④隙間が大きい部分
以上の箇所に使うと一般には言われておりますね。
さて、モリブデングリスですが、特徴を挙げると…
・極圧性が高い
極圧というのは、点や線で接触した接触面に掛かる圧力のコトで、ボールベアリングならレールとボールは点接触ですし、ギアの歯同士なら線接触ですね。面で接触するブレーキなどは、極圧とは言いませんね。
・耐水、耐熱性が低い
モリブデングリスは歯磨き粉程の粘度しかなく、えらい柔らかいグリスです。この柔らかさが耐水、耐熱に弱いコトを表しているのですが…水で流されやすかったり、どのグリスでも熱で粘度は落ちるモノなので、より硬い(ちょう度が高い)程熱に対して有利です。
・初期馴染みを良くする効能、耐磨耗性が高い
モリブデンは、戦車の弾の表面やピストンの表面にコーティングされる程、滑りやすいモノです。結果として、少しづつ接触面を馴染ませてくれるので、エンジンを組む際に塗布したりするのです。
以上のコトを頭に入れてから…
メンテナンスの場面で、逆にモリブデングリスを使いたいなぁって場所を考えてみましょう。
極圧の掛かる場所って…スイングアームやリヤサスのリンク、ミッションのギア、ドライブシャフトの
ギア…そのくらいでしょうね。おそらく、この中のスイングアームや、リヤサスのリンクの部分が
疑問の主な場所になるのだと思うのです…
なぜなら、この場所はメカによって使うグリスが違う場合が多いからです。
確かに、スイングアームやリンクにはニードルベアリングが使われており、線接触ですし、マシン
によっては、ジャンプしたりで荷重がかなり掛かりますからね。
なので、極圧性の高いモリブデングリスを使いたいのは理解できますね。
しかし、この場所は雨風に晒される場所で、更にそうそうメンテナンスが頻繁に行われる場所とは
言いがたいと思います。スイングアームを脱着するコトをイメージしてもらえば、その作業の大変さ
は理解できるでしょう。なので、一般道を走るマシンにはモリブデンを使うコトでフリクションを減
らすコトより…耐恒性を優先し、メンテナンスの回数を減らすコトを目標にしたい。
そう考えて、モリブデンは使わないようにしています。
リチウム石けん基ベースのグリスを使った方が、粘度があるのでフリクションが増しますが、
長寿命と思います。ただし、フリクションの少なさが魅力なのは確実なので、使用法を良く聞いて
から入れるコトにはなりますが、モリブデンは別な場所に使うようになります。
では、ドコに使うの?
ドライブシャフトのオイルに混ぜて使うコトがあります。グッツィはそれが指定なのです…
でもね、オイルに含まれるモノと、グリスに含まれるモノは実は違うのです。
オイルに添加されるモノは、オイルによく馴染んで沈殿しないのですけど、グリスに含まれるモノ
は、沈殿しちゃうのですよね。ですから、ケースの内部が真っ黒になったりするのです。
もし、エンジン内部に使ったら…オイルジェットの詰まりを誘発したりして、逆に潤滑不良を起こす
可能性を秘めており…ますます使う場所が無いのです。
以上の理由から、モリブデングリスは使わないという結論に至るのでした。長々すみません。
オマケに…グリスアップとよく言うけれど、どうやっていますでしょう?
コレ、ベアリングですね。シール付きで、中に水やゴミが入らないように…中身が出ないように…
好んで使うベアリングになります。実はコレ…
シールが外せるのですよ。ピック等の先端の細いモノで引っ掛けると簡単に外れます。
こうなれば、普通のベアリングと変わらないですね。内部のグリスをパーツクリーナーとエアで
吹き飛ばすと、更の状態のベアリングになります。こうしてから、お好みのグリスを塗り込めば…
コレは、ついでですからモリブデンを封入した、「モリブデン封入ベアリング」の出来上がり~
使わないけど。
モリブデングリスは流れやすいので、シール付きはもってこいですね。でも、熱での油分の
分離が激しいので、長期の使用は厳禁ですけどね。同じように、ゾイルグリスを入れたら、
「ゾイルベアリング」が出来ますし…シリコンベアリング(使えないけど)だって思いのまま。
新品のベアリングにも応用出来ますから、お試しあれ~♪
マニュアルには細かく指示してありますよね
ここはコレ、あっちはアレみたいに・・・
私は極圧万能グリスを使ってます
流石に全種類は揃えても・・・
シロウトがやるとこも限られますしね
by SerowGOGOGO (2007-01-15 00:58)
おはようございます。
早速のご教示ありがとうごさいました。
マニュアルは持っていますが、全部モリブデンにすれば(ゴムやプラは別として)もっと軽快な動作?になるのではという素人考えからの疑問でした。
愚問へのご回答感謝です。
by キムキム (2007-01-15 08:29)
こんばんは。
グリスのはなし、勉強になりました~。
メンテナンス性と適所の両方を考えて利用することが重要に思えました。
ベアリングの蓋は外してもOKなのですね。こんど試してみます。
by Montego-Blue (2007-01-15 23:23)
□ 555さん
nice!ありがとうございます。
長々と書いてしまうのですけれど、最後までお付き合い頂き、ありがとう
ございます。
マニュアルには、使用するモノが巻頭の方に載っておりますが、モリブデン
グリスはなかなか載ってなかったりしますね。文中にも書きましたが、あまり使う機会が無いので、マルチグリスと、シリコングリスを揃えれば十分かと思います。
むしろ、アンチシーズなどを揃えた方がベターかもしれないです。
by Yubo (2007-01-16 00:26)
□ キムキムさん
コメントありがとうございます。
リクエストに応えてみましたが…的ハズレじゃありませんでしたか?
長々と書いていると、途中から書きたいコトがズレて行くので…
お役に立てれば幸いです。
by Yubo (2007-01-16 00:29)
□ Montego-Blueさん
nice!ありがとうございます。
モリブデングリスに絞った記事になりました。まだ、話し足りないコトもありますので、また折をみて記事にしようかと思っています。
ベアリングのシールを外す際は、慎重に…リップを傷付けないようにして
ください。
by Yubo (2007-01-16 00:32)
ウレア系グリスと極圧(ハイポイド)の件で検索していて漂流してきました。
すみません。
模型の話ですかね?
グリスはベースに何を使っているか
添加剤はなにか
の2つの視点があります。
グリスの基はシリコン、リチュウム基、ウレア系、他があって、
モリブデンは添加剤です。
by k521 (2010-02-22 01:13)
耐熱性はモリブテングリスはありますよ
メーカーから聞いてます
by 松根康人 (2011-10-08 01:26)